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「少女ゴーグル」発売に寄せて / 森本ヨシアキ

プレスポップの新刊「少女ゴーグル」(ジュヌヴィエーヴ・カストレイ)を一気に読んで、深い感動と安堵に包まれた。
同じ作者による「Lait frappe」という単行本を今から15年くらい前にひょんなはずみで買っている。それは「暗い表情のパンク少年と少女が酒と麻薬・ロックに耽溺し、最後は首をくくって死ぬ」というあらすじの、救いの無いコミックで「なんでこんな暗い話をわざわざ描くのか」と、少し前の古谷実の漫画に抱くような思いを長年持て余してたのだが、今回の自伝コミックを読んで納得できたような気がした。
「Lait frappe」はおそらく作者自身が精神的にどん底の頃に描かれたセルフポートレイトのようなものだったのでしょう。
本作「少女ゴーグル」での作者と家族との、地獄のような生活描写、友人たちとの断絶描写を読むと、その精神状態がああいう暗いコミックに反映されたのも納得がいく。
それにしても。
家庭の貧困や大人からの圧力・無理解に対し、子供という存在はなんと無力なのか・・・本作「少女ゴーグル」は現代の日本に生きる我々にも(にこそ)読まれるべき普遍性と訴求力のある作品だと思う。
失われた少女時代。
実家を飛び出すまでのヒロインがどのように人生をサバイブし、その先に何が起きるのかは読んでのお楽しみだ。
いま現在苦しんでいる若い人たちにこの本を薦めたい。偏執的なほど細部にまで描きこまれた絵と、実父の家でのヌケのいい背景の対比を楽しめるのも紙の本ならではの贅沢だ。
また、「作者自身が日本語で描いたんじゃないのか」と思うほどの、描き文字トランスレイトのイタコっぷりにも感服した。本作の邦訳リリースを待たずして他界してしまった作者ジュヌヴィエーヴ・カストレイ(訃報を聞いたプレスポップは本書の発売を49日遅らせたそう)。その冥福を心の底から祈ると同時に、あまりにも劇的な彼女の人生と、ストレートに胸を打つ「彼女の物語」が少しでも多くの人に読まれますように。

 

– 森本ヨシアキ (漫画・淀川ハートブレカーズ原作者)

コミック「少女ゴーグル」(ジュヌヴィエーヴ・カストレイ)→

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