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Canada Comic Art トークショーのレポートが届きましたよ

Canada Comic Arts 展 トークショー

日時:11月18日19:05〜20:33終了

会場:渋谷パルコ part1 地下1 パルコ・ブックセンター

出演:TCAFダイレクター :クリストファー・ブッチャー/作家:モーリス・ヴェレクープ/作家:ラヴ・ラヴ・ヒル

通訳:ジョスリン・アレン

司会:中沢俊介

 

メープルシロップや、アイスホッケーをはじめとするウィンター・スポーツでおなじみの国、カナダ。似たような歴史をもつアメリカが隣国である地の利もあってか、同国は音楽や映画において世界的なスターを多数生み出してきた。(ニール・ヤング、グレン・グールド、カーリー・レイ・ジェプセン、デビッド・クローネンバーグ、ジェームズ・キャメロン……それこそ枚挙にいとまがない)

コミック界に目を転じると、スーパーマンを創造したコンビの片割れジョー・シャスター、自費出版コミックの開拓者のひとりである『Cerebus』のデイブ・シム(Dave Sim)、90年代にとんでもない商業的成功を収めた『スポーン』のトッド・マクファーレン(Todd McFarlane)といった重要な作家が、じつはカナダ人である。また近年では、モントリオールに本拠を構えるドロウン・アンド・クォーターリー(D&Q)社が、世界のアート系コミックの頂点と呼んでも過言ではない存在感を見せている。

とはいえ、多彩な才能を輩出しつつも、実際の活動や評価の場となると隣国アメリカの存在は大きい。とくに海を隔てた日本人としては一緒くたに捉えがちで、コミックに限って考えても、“カナダ的”なものとは何であるか、いまひとつ掴みづらいのが実情である。

そんななか、カナダ・コミックの振興を目的とする団体TCAF (Tronto Comic Art Festival)が自国の作家を引き連れて来日し、トーク・イベントを通じて現地のコミック状況について語ってくれた。出席者はモーリス・ベルクープ(Mourice Vellekoop)、ラブ・ラブ・ヒル(Love Love Hill)といった作家陣と、団体の創設者のひとりクリストファー・ブッチャー(Christopher Butcher)。(ちなみにカナダでも、フランス語が公用語であるケベック州は独自の文化を形成している。今回はカナダのおよそ八割を占める英語圏が話題になっている)

話題は多岐に及んだが、簡単にまとめると、

・DC、マーベルといった所謂メインストリームのアメコミでもカナダ人作家が描いていると、ときどき同国人ならではの思わずニヤリとする部分が出てくる。

・日本マンガに親しんで育った世代が台頭しつつある。映画化もされた『スコット・ピルグリム』シリーズの作者ブライアン・リー・オマリーもそのひとり。

・作家として自国に留まって活動を続けることで、市場の限界はあるものの、アメリカの流行に左右されず、マイペースに創作に集中できる。

思えば、D&Q社は90年代以降チェスター・ブラウン(Chester Brown)、セス(Seth)、ジョー・マット(Joe Matt)、そしてエイドリアン・トミーネといった、当初は無名に近かった作家による私小説風コミックを出版して名を高めた。なかでもエイドリアン・トミーネは、いまやニューヨーカー誌の常連イラストレーターにまで登りつめている。とりたてて新奇なことをやっているわけでない彼らの等身大な作品は、それでも当時のコミック界で新鮮な魅力を放っていた。(ジョー・マットとエイドリアンはアメリカ人だが)

そしてカナダといえば、どちらかというと最新流行の作品が好まれる日本マンガの翻訳出版において辰巳ヨシヒロを見出し、もしかすると日本を越える数の読者に紹介した国でもある。そんなこんなを重ね合わせると、おぼろげながらコミックにおける“カナダらしさ”が見えてきそうだ。

 

レポート作成:中沢俊介(翻訳家)

 

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